息子を奪われた母がたどり着いた「愛と赦し」の物語

心の学校キャンパススタッフの川村です。今回は、高橋洋子さんの、深い喪失と魂の再生の体験をご紹介します。

最愛の息子さんを理不尽な事件で亡くされたのは、2014年のことです。その夜、いつも通り、家で息子さんの帰りを待っていました。

すると、外から人が駆け出す音、何かが雨戸に激しくぶつかる音、そして「助けて、助けて」というかすれた声が聞こえてきました。

けれど、恐怖に身体がすくみ、どうしても外に出ることが出来なかったそうです。翌日、庭で見つかったのは、息子さんの鞄でした。

「なぜ私は出られなかったのか。どうして守ってあげられなかったのか」息子さんは、その壁一枚隔てた場所で、母を呼んでいた。

けれど、それに応えることが出来なかった。この事実が、彼女の心を八年間、苦しめ続けたのです。

「何で助けてくれなかったんだよ」ふとした時に聞こえてくる、息子さんの声。その幻聴ともつかぬ響きに、何度も胸を引き裂かれ、職場へ向かう車の中で涙が止まらなくなる日々が続きました。

そんな地獄のような日々の中、知人の紹介で「心の学校」の存在を知ります。藁にもすがる思いで、佐藤康行先生のメソッドに取り組まれました。

最初のうちは心の痛みに覆われ、なかなか真っ直ぐにメソッドで得た体感を受け取ることが出来ませんでした。

しかし、「このままでは何も変わらない」という強い気づきとともに、自らの心と正面から、向き合う覚悟を決めます。

「私は、親に生かされてきた。私は愛されていた。なのに、そのことに気づかず生きてきた」深い恥と感謝が、彼女の心を満たしていきました。

2022年、息子さんの遺骨が見つかったと知らされた日、あれほど「殺してやりたい」とまで思っていた犯人に対し、彼女の口から出たのは、「息子の居場所を教えてくれて、ありがとうございます」という、信じられない言葉でした。

佐藤先生は、こう、高橋さんに伝えました。「殺害され、母親を悲しませた息子さんを今から最高の親孝行息子にしましょう。犯人の美点発見が出来たらいいね」

最初はただ涙するだけで、何も書けなかった美点発見ワーク。それでも、毎日少しずつ、犯人の美点を書き続けました。

二か月後、百個目に書いた言葉は「犯人と息子は同じ」その瞬間、被害者・加害者という枠を超えた、これまでにない深い愛が、湧き上がったのです。

もちろん今でも、恨みや憎しみの感情が完全に消えたわけではありません。けれど、物事の裏側にある「愛」や「恩」、命の尊さに目を向けることで、高橋さんの心は大きく癒されていったのです。

このお話しから、こんなことを学べるのではないでしょうか。

どんなに取り返しのつかない出来事であっても、「心の向け方」が変われば、そこから意味と希望を見い出すことが出来る。

佐藤康行先生は、悲しみの中にあっても人を再び立ち上がらせます。そして何より…「出来事は変えられなくても、その意味は変えられる」このことを、高橋さんの体験は私たちに強く教えてくれています。

最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。また、この場所でお目にかかりましょう。

心の学校キャンパス・スタッフ 川村力雄